妄想サンバ

助走をつけた妄想がやがて暴走していく文章になる

野良猫と会話した

 親父と喧嘩した結果「出て行け!」と言われたので、それなら出て行くか、というノリで近くにあった祖母の家に居候することになった。帰るまでに何日かかるかは分からないが、まあしばらくは居候することになると思う。
 居候先ではパソコンもなければWiFiの環境もないので、動画も何も見られず暇をしている。まあ大抵はぼーっと天井や壁を見つめたり、音楽を聴いたりしている。本を読んだりとか、勉強したりとか、そういう段階までは回復してない。
 先日、家の前にあった自動販売機で飲み物を買おうとしたら三匹の野良猫を見かけた。自動販売機の前に立つおれをじーっと見つめている視線を感じたので振り返ったら三匹がこちらを見ていた。最近飲めるようになった缶コーヒーを手に、野良猫に語りかけた。
「はじめまして」
「……」
「なんだ、鳴かないのか」
「……」
「最近こっちに来たんだ。よろしく頼む」
「……」
「おれは精神科に通っていて、さっきも行ってきたところなんだけど、そこで尿酸値が高いって言われちゃって、うるせえよ、精神科は精神だけ診察してろとか思ったりして」
「……」
 こんな感じで会話(?)した。やってみると分かるけど野良猫との会話は楽しい。話を聞いてんだか聞いてないんだか判断できない表情でじっとこちらを見つめ、他の野良猫とじゃれあい、まだ話の途中なのに草むらに戻って行ってしまったり……。
 猫は見ているだけで癒される。猫と会話する以外はひたすら虚無な日常を過ごしているので、積極的に猫に話しかけたいと思う。