妄想サンバ

助走をつけた妄想がやがて暴走していく文章になる

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 日記を書くと決めたものの、何もない日々が淡々と過ぎていくだけで何か書くものはない。だが世の中は淡々と過ぎ行きてはいかないもので、色々なところでいろいろな事件が起こっている。

 政治に興味はない。生まれつきだと思う。何かおれの遠いところで物事が展開しているから、そんなに興味を持てない。では自分の半径一メートルの世界に何か興味を持てているかというと、実はそんなこともない。

 というわけでまた自傷してしまった。前回は傷が浅すぎてあまりにも自傷とはいえないようなものだったので、今回はより深く。前回の自傷の記憶は一切ないので、より鮮明に。

 自宅に包丁はない(隠された。おれが自傷した後からだ)ので、小型のハサミでやった。ぐぐぐと力を込めた。痛い。前回はそんなに痛かったっけ?と思ったが、今回はかなり力を入れてやったから当然だ。

 左手首が腫れてくる。血が滲む。前回より傷らしい傷になったかなと思ってやめる。何のために自分の身体を傷つけているんだ。そんなことならさっさと死んでしまえばいいのに。

 起きて、夕食を食べている時に父に傷を見つけられた。そこから説教されたがよく覚えていない。父も母もおれの精神状態の悪化を感知してて、何らかの責務を果たそうとコミットしてるが、今更そんなことをやられても手遅れだ。

 その流れで、都会はおれの環境に合わないからどこか遠いところへ引っ越そうと言われる。バカか、と思って受け流す。

 二月二十日。好きだったアイドルが卒業する。彼女は芸能界も引退するのでもう二度と会えない。悲しいが、すぐに忘れるかもしれない。人生とはそういうものだと思う。

 明後日には高校の時と友人と会ってアイドルのライブに行く。今一番心配しているのはリストカットの傷痕がバレないだろうか、ということ。リストバンドを見つけたので装着していくと思う。おれは変わってしまったが、友人は変わらない友情を向けてくれる。ありがたいことだと思う。

 変わってしまったといえば、更に俺は喫煙者になってしまった。友人は喫煙者になった俺を軽蔑するだろうか。当分隠すつもりだがいつまで隠し通せるかは分からない。

 そういえば別の友人が大学を留年した。気の毒だ。あんなに勉強を頑張っていたのに。近いうちにみんなで励まそうということになった。金はないが、俺も慰めにいきたい。みんなからのパワーを貰いたい。

 以上、日記終了。自分の文体が分からなくなってしまって久しい。小説を書いているが、書いては消し、書いては消しの繰り返し。おれはなんで小説なんか書いているんだろう。何か急き立てるものがあって書いているに違いないけど、一体その俺を急き立てているものが何なのかは分からないままだ。

 人生には分からないことが多すぎる。