妄想サンバ

助走をつけた妄想がやがて暴走していく文章になる

クリスマスが今年もやってきた!

「クリスマスは今年もやってくる~」

 当たり前じゃん。お前暦を何だと思ってるんだ?

「あんた、今年のクリスマスの予定はないの」

 ハッとして正気に戻り卓袱台を挟んで向かいに座っていた母親を見る。これ、幼馴染で同級生とかだったら喜べるセリフですが、母親(54)が言っているので単純に俺をからかい侮蔑する目的だということがわかる。

「いや、ありません」

 潔い。さすが日本男児。なぜこんな大和魂を持った真の男がモテないのか。何が君の名は。だよ。ん? 俺か? 俺の名前は公的抑圧、よろしくな!

「あっそう」

 お前は昭和天皇か。

 ところでなんでクリスマスって街がいきなりウキウキモードになるんだ? 挙句の果てに恋人達が今夜はマジでハチャメチャにセックスしていいっすよ! みたいなノリになるのが本当に解せない。大体クリスマスはキリストの誕生日を祝う祭典なんだから姦淫は禁止のはずだろうが!!!!!! コラ!!!!! お~~~~~いイスラム原理主義! 東京だ! 今が絶好のテロチャンス! かかってこいや!!!!!!!

 少し冷静になろう、クリスマスがウキウキモードになるのはこれは確実に電通が関わっている。何故か? ギフハブと電通はつながっているからな、この前ASKAが「これは発達障害に効く薬です」って言いながら俺に教えてくれた。

 イメージ戦略というのは大事で、クリスマスがいつの間にか浸透し恋人達がおおっぴらげにまぐあってもいいようになったか如く、俺もいつの間にか「公的抑圧はモテない」という公的抑圧のせいでモテなくなっていて、つまりこれは鶏が先か卵が先かみたいな話だが、しかしやっぱり俺はイメージのせいでモテてないんだと思う。

 俺は無職の割に清潔(ちゃんと風呂も一週間に一度入る)だし、話も上手いし、何より人間に魅力があると思う。例えば……カビゴンに似ているところとかかな。

 というところまでを友人に話したら「それって嫉妬じゃない?」って言われた。お、お前な~~~~~~~~。お前ら一般人はそうやって俺達のような下層が上の人間に噛み付いているのを見ては「それって嫉妬じゃない?」と言って誤魔化すが、実際には俺はお前らと俺がここまで差別化されるのは何故かという構造の問題を指摘シているわけで、なんでそれに気付かんのだ! 愚かな人種だ! 性愛の喜びを知った人間はみんなこうなる!

 ふと、冷静になる。確かに今の俺の言動は嫉妬そのものなのでは? 「それって嫉妬じゃん」と言われてムキになり「これは構造の問題じゃん」と言い出す。しかし構造の話を持ち出せば上位層の友人の方がこの問題には無頓着なわけで、それってつまり俺が下の人間だから「どうしてあいつが上で俺は下なんだよ」的嫉妬に基づいた発想なわけだ。

 また一歩人類の真理を解き明かしてしまった……と得心してマックのポテトを食べていると、友人が「お前そういう間抜けな顔してるからモテねえんだよな~」って言ってきた。お、お前……お前、言って良いことと悪いことがあるぞッ! と絶叫した次の瞬間には友人を殴り殺していた。おい!!!!!! もう嫉妬でもなんでもええわ! 殺す! お前ら全員殺して内戦起こしてシリアのアレッポよりも悲惨な状況にしてやるからな! 覚悟しておけよ!!!!!!!!!!!

 ハッとして辺りを見回したら自宅だった。なんだ、今のはパラノイアか……と思って目の前を見たら母親がまだ話している。

「あんたって一生童貞よね~」

 俺はまず母親の首を絞めた。